10月22日(木)、早稲田大学・国際教養学部助手の岩内さん(博士後期課程在籍)らと一緒に、ポストモダン思想の著作を読んでいく「ポストモダン思想研」(ポスモ研)を始めました。
第1回の研究会では、デリディアンとして知られるジャン=リュック・ナンシー(1940~)の『無為の共同体』を扱いました。非常に読みにくかったですが、熱い討論を通じて、少しずつモチーフと議論の構造を明らかにすることができました。
研究会の目的
なぜポストモダン思想の研究会を始めたかというと、現代思想の流れをきちんと押さえておきたかったからです。
硬直したマルクス主義の真理主義に対する対抗理論として現れてきたという経緯上、ポストモダン思想は普遍性や既成の制度、とりわけ近代社会に対する徹底した批判で知られています。ただ、その手法はしばしば相対化の形を取り、実存や社会のあり方に関する原理を置き直し、深化させるには至っていません。
とはいえ、きちんと読まずに先入観で批判するのは、哲学という言語ゲームの基本ルールに反することです。哲学では著者の問題意識を受け止めて、フェアな態度で読むことが大事です。ポストモダンの思想家としては、デリダ、フーコー、ドゥルーズらが特に有名ですが、その後の世代もまた相対化に陥っているのか。あるいは別の仕方で私たちの生、社会に関する原理を置き直しているのか。その点について吟味し、悪しき相対主義を批判するとともに、鋭い感度と優れた直観を取り出すことが、研究会の第一の狙いです。
ポストモダン思想潮流の見取り図
デリダ、フーコー、ドゥルーズの後の世代のポストモダン思想の潮流について見取り図を置くと、おおよそ次のようになります。
- デリディアン
- フィリップ・ラクー=ラバルト
- ジャン=リュック・ナンシー
- アルチュセリアン
- ジャック・ランシエール
- アラン・バディウ
- エティエンヌ・バリバール
- フカルディアン
- ジョルジョ・アガンベン
- ジュディス・バトラー
- ドゥルージアン
- アントニオ・ネグリ
このほか、ジャン・フランソワ・リオタールやジャン・ボードリヤール、ピエール・ブルデュー、スラヴォイ・ジジェク、リチャード・ローティなどがポストモダンの思想家に含まれます。
研究会ではこうした思想家のほか、ハーバーマスやスピヴァクなど、いわゆるポストモダン思想ではないけれど、一人で読むにはなかなか骨の折れるものを扱っていく予定です。
今後の予定
いまのところ、以下の順番で読んでいこうと考えています。
- ナンシー 『無為の共同体』(10/22 14:00-17:00)
- スピヴァク『サバルタンは語ることができるか』 (11/12 14:00-17:00)
- ドゥルーズ『差異と反復』 (11/26 14:45-17:00)
- バトラー、ハーバーマス、テイラーら『公共圏に挑戦する宗教』(1/14 14:45-17:00)
- ムーア「常識の擁護」「観念論の論駁」、ヴィトゲンシュタイン『確実性の問題』
- ローティ『哲学と自然の鏡』
- デリダ『グラマトロジーについて』
以後は未定ですが、ランシエールあるいはバリバールか、バトラー、ハーバーマスのゴツい著作に取り組むことになると思います。