[Q&A]恋愛哲学でスゴいのは誰ですか?

恋愛哲学でスゴいのは誰ですか?

プラトン!

プラトンの恋愛論がスゴい!

恋愛論で優れた哲学者といえば、何といってもプラトンです。プラトンは名前からしてスゴそうなイメージがあるかもしれませんが、中身がとにかくぶっ飛んでイケてます。

古代ギリシア人だから古い?それは先入観です。これまでの恋愛経験にもよると思いますが、素直に読んでみると、確かにそうだと納得できるところがいくつもあるはずです。

プラトンは主に『饗宴』と『パイドロス』という2つの著作で恋愛について論じています。忘れないうちに言っておくと、恋愛の哲学に興味があるならこの2冊は必読だと思います。必読書という言い方はあまり哲学的ではありませんが、この2冊は確かにおすすめできます。

『饗宴』はこちらで解説しました → プラトン『饗宴』を解読する

『パイドロス』はこちらで解説しました → プラトン『パイドロス』を解読する

以下、『饗宴』のポイントを簡単に確認してみたいと思います。

恋愛は肉体を入り口として魂へ向かう

プラトンの恋愛というとプラトニック・ラブが思い浮かぶかもしれません。簡単に説明すると、これは恋愛から肉体的な側面を無くして、純粋に相手の内面(魂)を愛する恋愛のことです。

ただ、実際に読むと分かりますが、プラトンのいう恋愛はプラトニック・ラブとは全然異なります。プラトンは外見の美を否定しているわけではありません。むしろそれに積極的な意味を与えています。

『饗宴』でプラトンは、師のソクラテスがディオティマという女性から聞いてきたという話として、次のような具合に論じています。

恋する者が最初に向かうべきは美しい肉体です。美しい肉体に向かったあとは、美しい魂に向かうこと。それによって肉体の美は魂の美よりも些細であることに気づくことができます。その後、美しい魂から「知識」へと向かっていかねばなりません。

これこそ正しき恋の道です。この道をたどることによって、美そのものに到達することができるのです。

したがって、正しき恋の道は、地上の美しいものを出発点として、この美そのものをめがけて上昇してゆくという過程なのです。

プラトンが言っているのは、恋愛の対象は美であるということ、また、肉体の美(外見の美)と魂の美(内面の美)はともに本質的であり、どちらか一方が欠けても恋愛は成立しないということです。

簡単に言うと、どれだけ「いい人」でも、外見が生理的にムリなら恋愛は成り立ちません。外見と内面の美しさを兼ね備えている相手に私たちは好意を寄せ、恋をするはずです(よね)。

もちろん外見と内面のどちらにウェイトを置くかは、個人や性別、または年齢によって異なってくるでしょう。ただ、美(よさ)を目がけるという意味では、どの場合も同じはずです。

内面も外見もおろそかにしない

プラトンが教えてくれる恋愛のポイントをあえて言ってみると、内面だけでなく外見もおろそかにしないことです。

外見が一般的な水準から劣っている気がするとつい「私は外見につられる男(女)なんかに興味はない!ちゃんと内面を理解してくれるひとが現れるときまで内面を磨いておけばいい」と思ってしまうのではないでしょうか?

それはそれで素晴らしい心がけだと思います。ただ、その場合でも、最低限の外見の美が恋愛にとって必要なことはぜひとも忘れないでください。別にファッション雑誌で勉強する必要はありません。大事なことは相手に不快感を与えないことです。清潔感のある服装や髪型など、少し気を配るだけでも違ってくるはずです。

中身だけでなく、見た目もおろそかにしないこと

恋愛の本質について考えることの意味

哲学の歴史上、プラトンを除いて、恋愛について真正面から論じた哲学者はほとんどいません(バタイユがエロティシズムについて論じていますが、恋愛論ではありません)。一応「恋愛哲学」というものもありますが、概して、本当なのかよく分からない経験則に基づく恋愛テクニックのまとめ集に、それっぽい言葉で権威をつけただけのモノではないでしょうか?

そうしたテクニックを紹介することが悪いとは思いません。ただ、それは自分にとって恋愛がどのような意味や価値をもつのかについては教えてくれません。「恋愛科学」も同じです。フェロモンがどうの、生殖本能がどうのと論じても、なぜ自分が他の誰でもなくあの人に好意を抱いてしまうのか、なぜ初めは楽しかったはずの恋愛が次第に苦しくなるのか、なぜ失恋があれだけ悲しいのかについては説明できません(フェロモンの質が変化したからとでも言うのでしょう多分)。

では、恋愛の本質を考えることの意味は何でしょうか?楽しい恋愛ができればそれでOKではないでしょうか?

確かに、いい恋愛が出来ているときに恋愛の本質についてわざわざ考える必要はないかもしれません。しかし、それについてあらかじめ考えておけば、なかなかいい恋愛ができないときに、とても大きな力になります。「早く恋愛しなきゃ」「周りが彼氏彼女持ちだから」と、焦ったり雰囲気に流されたりすることなく、自分が本当に取り組むべきことを考えることができるはずです。

他にも色々な「可能性」がある

ダメなものはダメ
ダメなものはダメ

深い失恋のうちにあるときにはなかなか気づきませんが、恋愛だけが人生ではありません。ほかにも色々な可能性があります。いつまでも恋愛に引っかかっていると、気がつかないうちにそれらの可能性を失ってしまうかもしれません。

失恋から立ち直りかけてきたときにはぜひプラトンを読んで、自分にとってあの恋愛がどのような意味や価値をもっていたのかについて振り返ってみてください。そうすると新たな可能性が次第に開けてくるはずです。プラトンの著作は、そのための思考の原理にあふれています。

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