PONTOON5月号に文章を書きました

幻冬舎の月刊デジタルPR小説誌「PONTOON」5月号に、文章を書きました。タイトルは「〈美食〉の情景」です。

イラストは茂苅恵さまに書いていただきました。イメージ通りの挿絵、ありがとうございました。

冒頭で論じておきましたが、私は、グルメとはほど遠い食生活を送ってきました。いまでこそ多少気にするようになりましたが、お金のない頃は、食事に配慮する精神的余裕はありませんでした。生活に不安があると、食事を満喫するのはとても難しいことです。

そういうわけなので、担当の編集者の方にバックナンバーを見せてもらったとき、率直なところ、これは受けない方がよかったかもしれない、と一瞬思いました。師の竹田青嗣に「3年間は何でも受けろ」と言われていたこともあり、もとより断る気はありませんでしたが、それまで書いていらした方々の、グルメ描写の上手いこと…。好きなご飯はと聞かれて、伝説のすた丼屋日乃屋カレーと答える自分には、グルメ描写はハードルが高すぎました。

そこで、グルメを「美食」と読み替えて、食事で〈美〉を感じた経験について書くことにしました。幸い、自分にもそうした経験があります。というよりも、それは、自分にとっての哲学の起点をなしているような美的経験です。

本論がどこまでが実話で、どこからか創作かということは問題ではありません。なぜなら、プラトンが言うように、美についてはただ想起によってしか論じられないからです。

それぞれの「美食」を想い起こしながら読んでいただけると、嬉しく思います。