フランスの哲学者ジャン・ジャック=ルソーの『社会契約論』の概要を箇条書きでまとめてみました。
『社会契約論』を読んだことを前提に、復習に使えるように書いてみました。いきなり読んでも分からないかもしれません。その場合はまず『社会契約論』を自力で読むか、以下の詳細解説を読んでみてください。
詳しい解説はこちらをご覧ください → ルソー『社会契約論』を解読する
問題と解答
- ルソーが置く問題:正当な市民社会(市民国家)の原理は何か?
- 解答は社会契約と一般意志。以下詳しく見てみよう。
社会契約と一般意志
- 力は権利を生み出さない(ピストルを向けられたときに従うのは殺されたくないから渋々そうするだけ)。なので「最強者の権利」という概念は成り立たない。
- では何が権利を生み出すのか?
- 人類が自然状態で生きられない状態になったとしてみよう。
- そうすると、人類が滅亡しないためには、互いに力を合わせて、自然状態とは異なる生き方を作らなければならない。
- その原理が社会契約と一般意志。
- 社会契約は初めの合意のこと。一般意志は自由と平等を普遍的な(万人にとっての)水準で両立させることを目がける初めの動機のこと。
「契約で成立した社会はない」という批判は無効。なぜなら、ルソー抜きで考えてみても、社会は1人では作ることができず、「一緒に共同生活を営みませんか?」「いいですよ」という他者との了解関係が必要だといわなければならないから(明示的であれ暗黙的であれ)。ルソーがいうのはそういう原理的な水準での話。「歴史的に実証されていない」は初めから相対化を狙った、あざとい言い方。
一般意志は市民国家の正当性の規準
- 一般意志は市民国家の正当性の規準。
- 『人間不平等起原論』で論じたように、人びとが政府を置く最初の理由は、契約を破ってズルをしようとする人から社会を保護し、皆ができるだけ自由を平等に享受できるようにすること。
- だからその目的を目がけないような政府は、そもそも政府としての条件を満たさない。
正当な国家は法治国家のみ
- 共和的な法治国家のみが正当な国家。
- なぜなら法の対象は一般的なものであって、公共の利益を目指すから(言い換えると、特定の誰かを優遇するような法は、どれだけ外見が立派でも本質的には法でない)。
政府は主権者の代理人
- 一般意志に基づく政府は主権者の代理人。政府それ自体は一般意志ではない。
- そういう政府の政治行為のみが、統治の名に値する。一般意志を反映しない統治は不当。
「ルソー=一般意志=ファシスト」のような言い方は先入観があるか、きちんと読んでいないかのどちらかです。どっちにしても恥ずかしいので止めましょう。
投票が一般意志を表明する
- 統治は政府に任せられるべき仕事(餅は餅屋)。市民の果たすべき役割は、提案された法律が一般意志に適っているかどうかについて、投票を通じて答えを与えることにある。
- これは「多数派が一般意志である」ではなく「全体としての投票結果が一般意志を表明している」ということ。なので少数派を無視していいということには全くならない。というか、多数派とか少数派とか関係なく万人が等しく自由であるような社会を目指すのでなければ、その統治はすべて不当。
市民感覚が主権の魂
- 「人民主権」は人びとが最初から権利をもっていることを保証していない!
- 人びとが市民として、投票のような仕方で統治に関わらないようになり、ただ税金を納めてメンドウなことはすべて役所まかせにするようになれば、その国家は死んだも同然。
- 世論などで市民感覚をたえず呼び起こすことが大事。なぜなら市民感覚こそ「国家の真の憲法」だから。