アリストテレスの『政治学』をコンパクトにまとめました。
一番大事なのはポリス(国家)の本質論。その他は実践論でやたらに細かいだけなので、ポイントだけ押さえておけば十分です。
詳細解説はこちらで行いました → アリストテレス『政治学』を解読する
『政治学』が実践論であるとする位置づけについては『ニコマコス倫理学』で論じられています。政治学はポリス市民が最高善を目がけられるよう配慮するための実践論として必要である、と。詳しくは解説記事に書きましたので、そちらを読んでみてください。
では見ていきます。
目的
ポリス(国家)の本質を規定すること。
結論
人間は善を目的因とする存在。ポリスは最高善を目的因とする存在。なのでポリスは人間にとって本質的なもの。
ポリスの本質
- 村落が集まって出来る最終の共同体
- 村落は家族が集まって出来る
- 家族 → 村落 → ポリス
- 人間にとって本質的なもの
- ポリスは人為的なものではなく、自然なもの
- 人間はポリス的動物
- ポリスは「市民」から構成される
- 市民は裁判と統治に参加できるひとのこと(奴隷含まない)
- 徳に配慮しなければならない
- 単なる生活共同体ではなく、最高善を目的因とするものだから
最終の共同体がポリス(国家)であると考えている点はひとつ重要なポイント。グローバル化が進んだ近代社会に、共通善の涵養という観点からアリストテレスの議論を当てはめようとするのは、かなり無理があります。
国制は共和制で
- 国制としては共和制が最適
- 公共の利益を考えるものが正しい国制だから
- 僭主制、寡頭制、民主制はダメ
- 民主制がダメな理由=貧困にあるひとたち(無産者)によって支配されるから
- 裁判と統治に参加しているひとが国制の中心でなければならない
- 一般大衆が最高の権限をもつべき
- (ここでいう大衆は「市民」のこと)
中庸が最善、なので共和制が最善
- 幸福な生=徳に適う生き方をすること
- なので、最善の生き方、国家体制は中庸を得ていることでなければならない
- 中間的な人びとの支配が最善
- プラトンの「哲人政治」を意識
- しかしこれはなかなか生じない
徳治ではなく法治
- どのような国家体制であれ、厳格な法治が必要
- 統治者が私腹を肥やすことがあってはならない
- 国政の主要な職務につくひとが備えておくべきもの
- 忠誠心
- 職務執行の能力
- 体制に適った正義の徳(それぞれの体制には、それぞれに適った正義の徳があるはず)
望ましい生活
- 幸福が「よく」行うことにあるとすれば、行動的な生活が最善
- ただし、何かを目的とした思考ではなく、それ自体のためになされる観照や思考のほうが行動的
「人間はポリス的動物である」については、こちらでも書きました → [Q&A]「人間はポリス的動物である」の意味は?